近代仏教建築の形成とアジア／亜細亜の形成・離散その１： コロンボ（スリランカ）の近代仏教建築

摘要

19世紀は、「近代」の担い手を自任して著しい空間的拡大を見たヨーロッパ世界に対して、各地でそれぞれのアイデンティティ構築が模索された時代である。本研究は、この局面をつうじて各地でキリスト教布教への対抗運動として生成し、南アジア、東南アジアから日本を含む東アジアまでを横断的に接合する思想的媒体へと成長した「近代仏教」に着目する。近代仏教は、概念としてのアジア／亜細亜を実体化する主要な実践の１つであった。本研究では、近代仏教の思想を物理的に体現した、寺院や教団施設の建築を近代仏教建築と呼ぶ。近代仏教建築は19～20世紀をつうじて多様な宗派により各地で建設された。それらの成立と相互の影響関係を跡付けつつ、そこから生まれる地域景観史を描き、各地域の位相と連環、国民国家以降の展開を浮かび上がらせることが大きな目的である。