伝統的建造物の修理計画および設計のプロセスについて:伝建制度における修理事業の実態に関する研究　その1

摘要

伝統的建造物群保存地区制度（以下、伝建制度）は発足から37年が経過し、平成24年12月現在、102地区が重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。伝建制度における歴史的町並みの保存は、保存計画に基づいて進められるが、その主たるものは修理・修景事業である。例えば、橿原市今井町伝建地区の保存計画では、「伝統的建造物(以下、伝建物)の修理は、街路から望見できる外観とそれを支えるために必要な軸組、小屋組、床組などの構造体、及び屋根を維持、整備又は復原する」ことを基本とし、修理の対象となる伝建物の「履歴を調査の上、原則として現状維持またはしかるべき旧状に復原する修理を原則とする」と明記されている。そして全国の伝建地区では、これまで多くの修理の実績があがっている。