近代日本建築教育の研究:早稲田大学建築学科・早稲田工手学校・早稲田建築講義録を事例として

摘要

建築教育は近代日本建築の素地を形成した、主たる要素の一つである。ここでの建築教育とは、明治期から始まった大学機関や実業学校などでの専門的教育をさす。1909年創立の早稲田大学建築学科（以下「建築学科」）もその一つである。関野克は大学における建築学科を、量よりは質の達成が特色であり、言葉をかえれば、エリートの教育を行なっていた教育機関としている。ここでエリートとよばれる存在は建築を設計し統率する立場にある建築家である。また、同時期に、早稲田には建築学科とは別に、二つの教育機関／制度が存在していた。一つは1911年創設の早稲田工手学校（以下「工手学校」）。もう一つは校外生制度による通信教育で、早稲田建築講義録という教材を発行し行われていた。（以下「講義録」）早稲田大学建築学科と上記二つの教育機関を含めた三つの教育機関を総体的に扱った研究は今まで発表されていない。