泉源と旅館の関係に着目した温泉町の形成過程:佐賀県嬉野市の嬉野温泉を事例として

摘要

「温泉町」は、近世以来の歴史を有するものが多い。それらは温泉という特異な資源に依拠して成立した町である。すなわち、温泉（「泉源」）は湯脈という地質条件に限定され「温泉町」の形成はそれに付随する。しかし、現段階で近代における建築史・都市史からの「温泉地」、「温泉町」に関する研究は、別府温泉や熱海温泉に関する報告はあるものの、いまだ手薄な状況である。近世以降、嬉野温泉は基本的資源が温泉のみである宿場町として成立し、純粋に温泉（泉源）と旅館の関係から空間変化の仕組みを解読できると考える。よって本稿では「嬉野温泉」を対象とし、温泉町の形成過程を解読することを目的とする。