嚥下音の時間-周波数解析に基づく嚥下リハビリテーション効果の定量的評価の試み

摘要

超高齢社会である我が国では高齢者の誤嚥性肺炎の発症が深刻化しており、簡便かつ定量性をもつ新たな嚥下機能スクリーニング検査法の提案が望まれている。我々はこれまでに頸部から採取した嚥下音に対してウェーブレット変換による時間-周波数解析を実施してきた。その結果、Fig. 1 に示すように嚥下音が第Ⅰ 音、第Ⅱ 音、第Ⅲ 音の3 つの音響成分で構成されていることが明らかとなり、それぞれ喉頭の挙上、食塊の下咽頭への流動、喉頭の下降に対応することがわかった。また、Fig. 2 に示すように嚥下音信号の包絡線を3次スプライン近似で作成し、3 つの音の時間的位置関係を表すパラメータSFP（Swallowing Function Parameter） = (T2-T1) /(T3-T1)を算出することで嚥下機能を評価することを検討してきた。今回の報告では、近年、嚥下反射の惹起性を高めるとして注目されている冷却炭酸水および嚥下調整食として用いられるゼリー食について、各試料嚥下時に得られたSFP 値に基づいてその有効性や最適物性を検証した。