石の代わりに貝を使う: 下総および江戸における貝殻地業と牡蠣殻葺きについて

摘要

牡蠣殻は建材としては漆喰の原料として知られている。一方でかつて江戸の町屋には牡蠣殻葺きと呼ばれる屋根形式があったが、これは牡蠣殻を石の代替品として使った技法である。この様な石の代わりに貝殻を使う技法が江戸から千葉県の下総周辺にかけて存在したのだが、これらは石の確保が困難だった当地ならではの技法の様に思われる。本稿では、個別に語られる事が多かったこれらの技法を、地質的な条件に基づく一連の技法として論じてみたい。