木のものづくり活動参加者の意識と行動の変化に関する研究: 京都府・美山町の木匠塾の実践を事例として

摘要

2015 年気候変動枠組条約第21 回締約国会議（COP21）では，温暖化対策に条約参加国すべてが参加する点で歴史的な「パリ協定」が締結された。建築業界も，環境に配慮した試みは，これまで以上に求められている。木造建築分野の森林に関する動向では，2010 年に公共建築物等における木材利用の促進に関する法律，2016 年にCLTパネル工法の告示が施工された。木造高層建築物の設計施工が可能になり，木材の利活用が促進されている。炭素固定が可能な木材の利活用は，脱炭素化社会を目指すうえで重要であり，建築や環境を学ぶ学生への森林環境教育の必要性は高く，森林系ボランティア団体数は増加している1)。建築分野の木のものづくり教育は，作業細部を見える化する技能教育の効果や2)，工業高校3)や専門学校4)，大学5)での実体験型教育が実践されている。建築教育での環境教育の必要性や6)，環境教育とものづくり教育を融合した教育効果7)，ものづくりを通じたまちづくり8)や自然保護9)，リサイクル活動等での人の意識や態度を評価した研究10)，「木を使ったものづくり活動（以下WCA）」の実践効果の研究11)12)13)も見られるが，環境教育とまちづくりがWCA に融合したプログラムの参加者の意識と行動に関する研究は少ない。一方，京都府南丹市美山町で開催されている美山木匠塾では，地域の特性や制作物の要望等を知るため，参加者はホームステイをして，中山間地の生活と仕事を体験しながら，ヒアリング等の現地調査を行う。2017 年には，開催地域の魅力を他地域に周知するため，WCA で現地調査をして地域紹介リーフレット（以下LF）を制作した。さらにWCA で設計制作された成果物は，地域外の取組みとして，コンペへの出品，商品化，都市部のイベントでの活用や，LF 配布等，多様な方法で地域の認知度を高めている。WCA が周知される事で，KYOTO 地球環境の殿堂や，木材学会全国大会で，環境問題におけるWCA の位置づけと内容を参加者がまとめる，ポスターセッションの機会を得た。このようにWCA 参加者が関わる地域は，開催地のみから，都市部まで拡張され，環境教育の内容も深化している。本研究の目的は，WCA 参加者へのアンケートと感想文より， WCA が，参加者の意識と行動に及ぼす影響を明らかにすることである。