サスペンス( 宙吊り) 映画における階段の役割

摘要

S F 映画では近未来的空間、歴史映画ではその時代の再現性が求められるように、ジャンルと空間は密接に関わる。その中で、サスペンス映画は日常空間が舞台となることが多い。そこで、階段という、移動や会話、休憩の場として日常に多く関わる慣習的建築要素に焦点を当てる。また、サスペンス映画の歴史を辿ると、1900 年代に端を発し、40 年代にジャンルとして確立、アルフレッド・ヒッチコックにより隆盛をみせる。そして、70 年代にブロック・バスター映画の登場によって衰退し、緻密な構成等の要素はホラー映画等に回収される。つまり、短期間で隆盛と衰退を迎えており、各期間で映像表現に変化があると思われる。そこで、本論文はサスペンスシーンにおける階段の通史的な役割と変遷を明らかにし、階段とサスペンス映画の関係を明らかにするものである。それにより、空間分析から映画に新たな視座を与えようとする試みである。