名取川水系における水生昆虫と付着藻類の関係分析

摘要

河川の生態系は大きく，基礎生産を担う付着藻類，水生昆虫に代表される底生動物，魚類に代表される高次の消費者の3段階に分類される．付着藻類は有機物の生産者として，生息する生物の餌量となり生態系において重要な役割を担う．また，増殖した付着藻類は出水に伴い，河床から剥離し，懸濁有機物質（CPOM， FPOM）として下流へ運ばれることにより，下流においても有機物源となる．水生昆虫に代表される河川底生動物は生産者と高次の消費者をつなぐ生物群として食物連鎖の中核をなし，生態系において重要な役割を持っている．そのため，付着藻類もしくは水生昆虫に対して河川環境が与える影響を評価する研究は多く行われている．また，河床における基礎生産を担う付着藻類の生物量はそこに生息する水生昆虫量に影響を与えていると考えられており，付着藻類量を推定する研究が多くなされている．しかし，実際に付着藻類と水生昆虫の生物量の直接の量的関係を議論した研究は少なく，両者の一般的関係は明らかになっていない．