相模川水系における障害生物: 障害生物の遷移と本川における藻類の繁殖事例

摘要

相模川水系の貯水池である相模湖(相模ダム)，津久井湖(城山ダム)では，生物障害を引き起こす藻類の繁殖が観察されている。相模湖の放流水をおもな原水とする浄水場では，ろ過閉塞障害，ろ過漏出障害および浄水着濁障害，異臭味障害等の生物障害が発生し，障害生物として大型珪藻のSynedraacus等，藍藻類のミクロキスチス(Microcystis spp.)および微細な球形緑藻，かび臭を産生する藍藻類のアナべナ(Anabaena spp.)などの植物プランクトンが観察されている。一方，相模川本川下流の浄水場では，上流湖沼で繁殖した障害生物の流下により同様の生物障害が発生していたが，近年，本川中流域で繁殖した藻類に起因する障害が観察されるようになった。本稿では，相模川水系の障害生物の遷移と，相模川本川滞留域において湖沼性ろ過閉塞障害生物のS.acusが繁殖した事例および比較的低濃度のかび臭障害に関与すると考えられる河床の着生•付着藻類の観察事例について報告する。