我が国の衛星搭載レーダ開発 TRMM からCPR まで

摘要

近年，地球温暖化など地球規模の気候変動が注目されている．このような気候変動に影響を与える要因として雨や雲の分布があるが，陸上だけでなく海上まで含めて全地球上の分布を知るためには，衛星を利用した観測がほぼ唯一の手段となる．宇宙航空研究開発機構（JAXA），情報通信研究機構(NICT)，株式会社東芝，及び日本電気株式会社（NEC）は1997年11 月に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星搭載降雨レーダ（TRMM/PR）を開発し，世界初の衛星搭載用降雨レーダを実現させた．TRMM/PR は3 年の設計寿命を大幅に上回って2014 年まで約17 年間運用され，高い評価を受けている．また，JAXA/NICT/NEC は，TRMM/PR の後継ミッションとして，2014 年2 月に打ち上げられた全球降水観測計画主衛星搭載二周波降水レーダ（GPM/DPR）を開発した．GPM/DPR は3 年2 ヶ月の設計寿命を越えて現在も運用中であり，高精度の降水観測を行っている．TRMM/PR 及びGPM/DPR はいずれも日米共同開発プロジェクトであり，地球に降る雨や雪の3 次元分布を測定し，天気予報の精度向上や気候の長期変動の予測などに貢献している．