Euler パラメータ表現に基づく宇宙機姿勢の確率システムによるモデル化と確率安定化

摘要

確率安定化制御は非線形システムの不確定外乱を厳密に考慮した安定性を保証するための制御方法の１つである．摩擦力がほとhど働かない宇宙空間では，少しの外乱によっても宇宙機に不要な回転運動が生じる．今後さらに高精度な観測や高効率な通信を行うにあたって，外乱が宇宙機に及ぼす影響を考慮して姿勢の安定化を行う必要がある．主な外乱としては太陽光輻射圧や重力，大気抵抗，磁場が挙げられる．他にもモデル化誤差や機器の配置の誤差による制御系のパラメータ誤差，観測機器に介入する雑音も考えられる．こういった外乱はあらかじめ正確に予測することが困難な確率的な要素を含む．そこで本論文では不確定外乱を受ける宇宙機を確率システムとしてモデル化し，確率安定化制御を用いることで外乱の不確定性を厳密に考慮した制御系設計が可能となる．非線形確率システムの場合，解過程の解析表現を得ることが一般的に困難であるため，その解過程を追跡することなく安定性解析を行う必要がある．確率システム理論の枠組みでは，制御系は確率微分方程式で定式化され，一般的な非線形確定システムに対するリアプノフ安定定理を確率解析の枠組みに拡張した安定性解析が行える．また不確定外乱は全周波数に成分を含む正規白色雑音として扱うため，外乱に対するロバスト性は十分に保証される．さらに確定システムの解析では見えてこなかった不確定外乱の影響を陽に考慮した性能評価や制御器の設計が可能となる．