し尿汚泥を用いた土壌改良資材によるカンショ栽培実圃場の細菌·線虫群集構造変化

摘要

し尿は，各地のし尿処理施設により処理された後，河川や海へ放流されている。し尿処理施設からは年間85万トンの余剰汚 泥（2017年現在）が発生しており，堆肥化やメタン発酵などの 再資源化は約23%である一方で，約72%のし尿汚泥が未だ焼 却処分されている。し尿汚泥堆肥は，窒素·リン成分が豊富で， 化学肥料に比べ低コストで入手できる。一方で，原料がし尿で あることに対して悪いイメージを持たれること，散布装置が使え ず農業従事者にとって施肥作業が大変であるといった問題も挙 げられている。以上のことは，下水汚泥堆肥などの他の有機汚 泥堆肥にも共通しており，し尿汚泥の特徴を活かした付加価値 の高いし尿汚泥の利用方法が求められている。我々はこれまで， し尿汚泥と杉破砕バーク，ため池脱水土を混合発酵させ， Bacillales目細菌と自活性線虫を顕著に含む土壌改良資材を 作製した。これを施用することでャマトイモ及び蒟篛芋の3年間 の実圃場規模試験栽培において，寄生性線虫のネコブセンチ ユウによる連作障害を抑制できることを見出している。しかし，他 の作物でも同様の抑制効果を確認していない。そこで本研究で は，宮崎県で多く生産されるカンショを対象とし，殺線虫剤によ らない線虫害抑制技術の開発に向け，し尿汚泥を活用した Bacillales-自活性線虫優占化土壌改良資材施用による作物へ の線虫害抑制効果と細菌·線虫群集構造変化を評価した。