形態学的同定に依らない18S rRNA遺伝子配列情報に基づいた 網羅的線虫群集構造解析方法の開発

摘要

線虫は土壌や海洋に広く存在し，土壌肥沃度や物質循環に おいて重要な役割を担うことが報告されている。線虫は食性に 応じて、動植物へ寄生する"寄生性線虫"と細菌食性，捕食性 等の"自活性線虫"に大別される。寄生性線虫は有用な動植物 に危害を及ぼすことから、防除方法に関する研究が盛hに行わ れている。一方で土壌中に存在する線虫の約70%以上を占 める自活性線虫に関する知見は未だ少ない。この原因として， 従来のベルマン法や二層遠心浮遊法を用いた方法では分離効 率が約50%程度であること、形態学的同定には専門的知識が 要求されること，同定に労力を要すること等が挙げられる。近年 DNA メタバーコーディングを用いた線形動物門全体の群集構 造解析に関する研究（プライマーの選定等）が多数報告されて おり，従来の形態学的同定と比較して簡便な検出が可能となつ たが，rRNA遺伝子のコピー数の違い，プライマーのカバレッジ により線虫群集を正しく評価できないことが問題となる。本研究 では形態学的同定に依らない18S rRNA 遺伝子に基づいた DNA メタバーコーディング解析手法の開発を目的とし，2種の プライマーセットを用いた線虫群集構造比較解析，定量PCRお よびべルマン法を利用した線虫群集の再現性評価を行った。