消毒剤によるウィルスタンパク質損傷の評価へ向けた定量プロテオ一ム解析手法の構築

摘要

ウィルスには地域による分布の違いや流行種の移り変わりがあり、水道原水に対して常に適切な浄水処理方法を選択するためには、不活化機構の理解を深める必要がある。従来は消毒処理前後のウィルスに対し感染価測定とともに定量PCRを中心とする遺伝子解析を併用し、DNAまたはRNAの損傷を定量することで感染価低減の根拠付けが試みられてきた。一方で、電気泳動、質量分析といった解析技術の向上や生化学的データの蓄積が進むとともに、もう一つの不活化要因であるタンパク質損傷の解析がアプローチされつつある。ウィルスは種によってタンパク質の種類、大きさ、数などが様々であるため、多くの種に対して汎用的な方法を構築する必要がある。本研究では、消毒に伴うウィルス不活化機構の解明に取り組むための研究手法構築を目的とした。具体的には、バクテリオファージMS2を用いてウィルス試料の調整方法検討、及び質量分析法によるタンパク質損傷の定量化を試みた。