イネにおけるオゾンストレスおよび窒素栄養応答に関わる分子機構

摘要

植物は様々な環境条件に曝されるが、その時々に応じて代謝の変化や防御応答を誘導することでその環境に適応する。しかし、種々の環境ストレスは作物の減収を招く大きな要因となっており、農業生産において重要な問題となっている。将来的により安定した作物生産を行い、食糧需要の増加に対応するためには、これらの環境応答メカニズムを理解し、その知見を利用して環境ストレスに対してより頑健な作物を育種によって作出することが重要である。しかし、これらの育種に有用な、環境応答およびストレス耐性の鍵を握る遺伝子やシグナル伝達経路の多くは未だ明らかとなっておらず、さらなる知見の蓄積が求められている。本発表では、今後、濃度が上昇し、作物生産に深刻な影響を与えるとされる対流圏オゾンと、持続可能的農業において重要な鍵を握る窒素栄養という二つの環境条件に着目し、その応答を担う分子機構について、最近の知見とともに紹介する。