河川汽水域における環境に配慮した河道設計法確立のための河道特性と貝類相の関係に関する研究

摘要

2006年に「多自然川づくり基本指針」が策定され，多自然川づくりがすべての川づくりの基本であることが定められた．その後，多自然川づくりに関する技術的，学術的知見が集積され，2008年に中小河川に関する河道計画の技術基準1)が制定された．当該基準の解説である多自然川づくりポイントブックⅢ2)では，山間地のセグメントMから自然堤防帯のセグメント2河道3)が対象とされているが，扇状地から自然堤防帯に相当するセグメント1及び2における事例や研究成果が大部分を占めており，河川汽水域を対象としたものはほとhどみられない．河川汽水域については学術的，技術的知見が不足しており，環境に配慮した河川改修技術および自然再生技術が確立されていない．河口域は，汽水環境に耐え得る特有の種が生息する特殊な場である一方4)，多くの河口域が既に人為により改変されている5), 6)．さらに，近年，津波災害対策等の河川汽水域における河川改修は頻繁に行われており，環境に配慮した河川改修技術の確立は喫緊の課題である．