リアルタイム電力取引市場を活用したデマンドレスポンスによる配電系統の最適運用

摘要

近年，わが国では低炭素社会実現を目指し再生可能エネルギーを用いた分散型電源の導入が積極的に行われている。太陽光発電設備(PV)や風力発電設備等の再生可能エネルギー発電設備は二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギー源として注目を集めている。しかし，気象条件により発電出力が大きく変動することから，配電系統に大量の分散型電源が導入されると配電電圧を適正範囲で維持することが困難となる。また，既存の配電系統は上流から下流への電力潮流を想定して構築されており，配電系統末端の電圧が再生可能エネルギーを用いた分散型電源の連系により上昇することが懸念されている。そのため，分散型電源の大量連系は上位系統への逆潮流を引き起こすなど技術的課題を有している。分散型電源を配電系統へ大量連系した場合，電圧調整装置である配電用変電所のLRT(Load Ratio control Transformer)やSVR(Step Voltage Regulater)による負荷時タップ切り替えでは急激に変動する電圧変動へ十分に対処することができない。この問題に対する対策として，無効電力調整用機器の配置や分散型電源側での無効電力制御が挙げられる。調相設備などの無効電力調整用機器の設置に関しては，将来の配電系統の構成変更の要因から最適な容量および設置場所の決定が難しいため，それら設備の追加的設置は抑制されることになる。以上の理由から近年では分散型電源による無効電力制御が注目を集めている。従来の分散型電源側による無効電力制御に関しては，分散型電源の力率を調整することで自端における電圧逸脱を解消する手法などが提案されている。これに対し，可変速風力発電設備や太陽光発電設備で利用される連系インバータは，インバータ容量の範囲内で無効電力を補償することが可能であり，この機能を利用した無効電力制御方法も提案されている。