DARP の現状について: 洋上飛行ルートの動的な選定による飛行

摘要

燃料の削減や環境問題対策を考慮し、従来より出発・エンルート・到着の各フェーズにおける様々な新しい運航方式が検討されてきた。その一つとして、2011 年4 月より、太平洋上におけるDARP（動的飛行経路変更方式：Dynamic Airborne Reroute Procedure）の試行運用をホノルル線復路便で開始した。DARP は、飛行開始後に最新の予想風を用いて効率的な飛行経路に変更を行う運用であり、洋上空域における燃料・飛行時間削減等の観点から効率的な運航を目的とした新たな運航方式である。試行運用の結果、一便当たり約700lbs の燃料節減量、約3 分の飛行時間短縮効果が見込まれたことから、DARP 試行運用適用路線を拡充し、現在ホノルル線往復便、米国西海岸路線にてDARP の試行運用を実施している。試行運用期間中の約5 年間のデータを分析したところ、DARP を実施することで1 便当たりにおける効果が最も多く得られた路線はサンフランシスコ線往路便であり、1 便当たり約2400lbs の燃料節減量、約9 分の飛行時間短縮効果が見込まれた。大きな効果が見込まれる一方、現在の飛行計画作成システムではDARP 実施手順が煩雑であることから、DARP 試行運用に賛同する航空会社は当初ANA のみであった。しかし、昨今の普及活動により、DELTA 航空も北米の一部路線でDARP の試行運用を実施している。DARP は、洋上空域における次世代CNS 技術と4D 軌道ベース運用（TBO、 Trajectory Based Operations）の導入に向けた一つの手段でもあり、本報告の結果は将来の航空業界のさらなる発展に寄与するものと期待される。