ウナギ用魚道の傾斜と突起物の間隔がウナギの遡上特性に及ぼす影響

摘要

我が国の河川や湖沼に生息するニホンウナギ(Anguilla japonica)はウナギ科ウナギ属の魚類で，アユなどの遊泳魚よりも遊泳能力の低い底生魚である．これまでウナギの産卵場などが不明だったが，Tsukamoto et al.1)は，マリアナ諸島西方海域が産卵場で，東アジアのほぼ全域が生育場であることを解明した．ウナギは孵化後，プレレプトセファルス，レプトセファルスを経て，透明な稚魚であるシラスウナギへと変態し，やがて東アジアの河口域へ接岸する2)．接岸後，急速に色素が発現し，シラスウナギから背が黒いクロコウナギとなる．クロコウナギは河川を遡上する特性を有しており，遡上後しばらくすると黄ウナギとなり，河川や池に定住する．淡水域で数年から十数年過ごした後，成熟した銀ウナギは産卵回遊のために河川を降下し，生まれ故郷に戻って産卵する．以上のように，ウナギは海洋と河川を行き来する通し回遊魚である．しかしながら，産卵回遊過程において，産卵場が特定されたことを除くと，ウナギの生態はほとhど解明されていない．