東京の中小河川における新たな整備方針とその特徴的な施策の背景

摘要

平成24年11月，東京都は区部中小河川の次期整備水準として75ミリ対応(20年確率降雨)の治水施設の整備方針21を公表した.本報告では当該整備方針のうち，特に特徴的な施策として，地域的な降雨特性を踏まえた目標整備水準の設定，広域調節池による整備水準を上廻る降雨規模への対応について，将来構想にも言及しつつ例示した.また，次期目標整備水準として区部河川の75ミリ対応が決定するに至る背景について，その一端を明らかにした.新たな施策では，行政サービスレベルの均一性(年超過確率1/20を同一にする)を確保しつつ，初めて地域の降雨特性に応じた異なる目標整備水準(東京·八王子の長期観測データに基づく降雨強度)を設定した.また流域や河川を跨いだ広域調節池の設置と運用においては，従来の放水路等の取水·排水が縦断勾配から一義的に定まるのに対し，本調節池では異なる流域間のいずれからも取水·排水可能な点において従来施設と異なり，目標整備水準を上廻る局地的かつ集中的豪雨などの降雨にも対処できるなどの利点を示した.