方向軸の定着と領域的空間の形成:空間現象の構造と増田友也の建築

摘要

増田友也［ 1914-1981］は博士論文『建築的空間の原始的構造』［ 1955］で､建築とは空間的な表象representation（知覚にもとづいて心的に構成される対象の像）であるという仮説をたて､その仮説のもとでとらえられる建築の発生と形成過程を記述した｡未開人は表象したことを行為として活動的に表出する傾向がある｡彼らが聖石のまわりで円座したり駆けまわるとき､そこには近づいてはいけないﾀﾌﾞｰの空間が心的に現象している｡増田はこのような見方で空間の発生をつかまえていった｡原始的な佇まいの儀場や仮設の住居が､一時的ではあるが卓越した空間構造を持っていることをさとったのである｡