門前町都市の近代都市形成経過に関する研究 その1:全国の32 の門前町を対象として

摘要

国内の都市計画研究や都市形成史研究では、城下町都市を対象とした研究蓄積が進hでいるのに対し(1)、門前町を由来とする都市は数が多い反面、既往研究は驚くほど少ないのが現状である。地理学分野では個別の事例を扱ったものはあるが、複数の事例を扱ったものは藤本利治の「門前町」（昭和45年、古今書院）2)が見られる程度である。また長野3)や弥彦4)などの特定の門前町を明らかにしたものはあるが、少なくとも多数事例を比較する形での門前町研究は非常に少なくなっている。そこで、本研究では門前町都市の特色を複数都市の比較から明らかにすることを狙いとする。つまり、門前町を由来としながら今日一定規模以上の都市に発展した事例を対象に、門前町都市の近代都市形成経過（明治期～戦前昭和期）の特色を実証的に明らかにすることを目的としている。本稿では、複数時点の地形図とともに、各時点の門前町の様子を読み取り、都市の変化を明らかにする。