種蔵集落における土地構成と土地所有:種蔵集落における土地所有・利用からみた空間的特徴 (1)

摘要

伝統的な集落景観は、明治期以降の農業の機械化や集落内における自動車道の整備などによって変化してしまったものが多い。その中で、岐阜県飛騨市北部に位置する種蔵集落(以下、種蔵)は、耕地整理を集落の一部にとどめ、自動車道の整備も最低限に抑えたことで、板倉や石積の棚田の景観が残っている。また、住民の高齢化や過疎化がみられるものの変化に応じて土地を変化させており、適度な耕作面積や母屋から耕地までの距離が保たれ、手作業による農業が続いている。こうした集落の営みの変化と景観には深い関係があるといえ、種蔵は、農村における景観の維持の重要なモデルとなると考えられる。