カーボンナノチューブ（CNT）を混錬した超軽量電磁波遮蔽シートのMIL-STD-285 法を用いた評価

摘要

近年の急速な通信技術の発展に伴い、電磁波適合性（EMC）確保のため、電磁波シールド対策の需要が高まっている。宇宙および航空分野においても、衛星質量の低減や機器配置自由度の向上を目指し、低電力化およびデータ通信の機器重量を減らすためのワイヤレス化やそれに応じた電磁波対策等が検討されている。一般的に電磁波遮蔽に用いられるのは高い導電性を有する金属材料であるが、ペイロードの軽量化が求められる宇宙・航空分野での使用には適していない。衛星内のワイヤレス化や将来の上空を利用した通信技術のさらなる発展に向け、人工衛星内やドローン等の飛行体に適応し得る軽量な電磁波遮蔽材料あるいは吸収材料が強く求められている。柳らは、CNT をカルボキシメチルセルロース（CMC）に混錬した材料およびCNT とセルロースナノファイバー（CNF）をCMC に複合化させることで超軽量な電磁波遮蔽・吸収材料を作製できることを示した。MIL-STD-285 法は１９５６年６月２５日に米国国防省から発行された規格であり、志田らは、本法について日本建築学会の電磁場計測法サブワーキンググループにおいて精査している。彼らの報告では、建築現場でのその有用性および問題点についても述べている。本研究では建築現場ではなく、２室式シールドルーム中で遠方界の挿入損失法を用いて、飛行体用に開発された電磁波遮蔽シートを評価した結果について述べる。