旧久米民之助邸（代々木御殿）に関する報告（その１）代々木御殿の敷地と建築の変遷、設計者について

摘要

土木技術者、実業家であった久米民之助(以下民之助)は、生涯で複数の自邸を構えた。本稿で取り上げる旧久米民之助邸（以下旧久米邸）は、現在の東京都渋谷区代々木上原に建てた「代々木御殿」と呼ばれた邸宅である。約4万坪といわれた土地に大規模な和館と洋館が建てられ、洋館部分が現地に2020(令和2)年まで現存していた。保存を目指す近隣住民と専門家の調査の後、2020年9月に解体され、民之助の出身地である群馬県沼田市への移築が進められている。本稿では、文献や地図、写真から、旧久米邸の敷地の変遷、設計者を調査し、実測・解体調査註1)をもとに当初図面の復元を行った。