居住空間における冬季の乾燥感と健康に関する調査研究: 東北地方の戸建住宅を対象とした横断研究

摘要

住宅の高断熱化に伴い，冬季の室内空間が乾燥するという認識が共有され，乾燥に対する問題意識は高まっている。これまでに乾燥に関する調査研究は数多く行われており，深井ら1) が実施した被験者実験では相対湿度10% の低湿度環境下においても乾燥感が知覚されず，高田2) は湿度だけでなく温度や気流も乾燥感に関係していることを指摘している。栃原ら3) は体の部位ごとの乾燥感に着目した被験者実験を行い，相対湿度30% 以下でまばたき回数が増加し，乾燥感が強くなることを示しているが，低湿度環境下での鼻腔内線毛の動きの低下や皮膚の水分蒸散量増加と鼻や皮膚における乾燥感の関連性は認められていない。また，長谷川ら4) は住宅を対象としたアンケート調査を実施し，暖房時間や換気時間が乾燥感に影響していることを示唆しているが，実測調査における室内温湿度や化学物質濃度と乾燥感申告の関連性は確認できていない。