平板状物体の初期飛散状況に関する実験的研究:エアパッド吸着を利用した固定装置の開発

摘要

構造物の強風被害は直接的な風圧力による構造骨組みや外装材の被害の他に，強風下で生じる飛散物の衝突による深刻な被害が少なくない．数値実験を用いた飛散物の運動に関する研究は数多いが，立川の研究1)のような風洞実験でその性状を検証した例はあまり多くない．Linらは電磁石を利用して試験体の固定度を制御した飛散実験を行い， Brentらは切妻屋根模型の棟部付近に屋根葺材を想定した試験体を電磁石で固定し，風洞内に乱れを再現して飛散実験を行った．実際の屋根葺材等は釘やボルトで構造躯体に固定されており，それらの固定力を高精度に制御するのは容易ではない．上述の磁力を利用する方法では，一般に残留磁気が残る電磁石の特性が釘等の固定力を高精度に再現することを難しくしている．本報告では，ある固定力で固定されている物体が飛散する状況をシミュレートするために，固定力を高精度に再現可能なエアパッド吸着装置の開発を目的とする．