住宅政策における社会住宅の位置づけと量的概要:フランスの社会住宅における管理体制に関する研究 その１

摘要

日本では現在、公共住宅ストックが老朽化し、その利活用や再生の試みが意欲的に行われている。その管理体制の模索の中、団地マネジャーなどの人的管理の可能性が検討されている。一方、フランスでは築70? 80年の高経年社会住宅が改修されながら現在も利用され続けている。バンダリズムや所得格差が社会問題化されているフランスにおいて、社会住宅団地の管理には建築物の維持管理だけでなく、地域社会の安全性の改善や活性化のために現地スタッフである管理人（以下、ガルディアン）の配置を義務化する法令が施行され、公的な住宅団地で人的管理の重要性が積極的に認められている。本研究は我が国の公共住宅ストックにおける人的管理の検討に寄与する基礎的知見を得るため、人的管理を含め法令化したフランスの社会住宅団地における管理体制を把握することを目的とする。本稿ではまず、既往研究や関連文献からフランス社会住宅の概念や基礎的情報を整理する。フランスの社会住宅制度に関係する論考や解説資料は、既に多く存在している。本稿では研究対象である社会住宅の位置づけを明確にするという狙いから、既往研究の情報を含め、さらに最新の統計情報を加えてフランスの住宅政策を概説し社会住宅の概念を整理する。