観光客アンケートからみた世界遺産?古都ホイアンの現状と課題:ベトナム?ホイアンの町並み保存に関する調査研究その16

摘要

ベトナム中部海岸平野に位置するホイアンの旧市街は、1999年12月、ユネスコによる世界遺産リストに、古都?ホイアンとして登録されたことを契機として観光客が増加し、現在ではベトナム屈指の観光地となった。しかし、観光客の増加に起因する町の著しい観光地化に伴い、本来の居住形式である店舗併用都市型住宅の崩壊、1棟貸しによる居住者のいない町家の増加、店舗面積拡大による居住環境の悪化、地元住民の減少と外部からの人の流入などの問題が生じている。そして現在、これらの問題により、ホイアンのリビングヘリテージとしての価値が脅かされ、世界遺産リスト登録の際に町並みと共に評価された、華僑文化の影響を受けたホイアン特有の文化の伝承の危機を迎えつつある。さらに、これまで増加を続けていた観光客数が2012年に初めて減少に転じたこともあり1、サスティナブルな観光地としての発展を目指す行政も危機感を募らせている。そこで本稿では、アンケート調査を用いて、観光客による現状評価の把握、観光地としての魅力の確認を行ったうえで、今後の課題を検討する。