筋拮抗比を用いた筋シナジー抽出ソフトウェアの開発

摘要

人は運動を生成するにあたり, 膨大な自由度の筋を一つ一つ制御しているのではなく, いくつかの筋同士の協調パターン(筋シナジー) の組み合わせによって表現できるという考えがある. 松居らは筋協調の最小単位として作用が相反する筋同士に着目し, その比を筋拮抗比と定義し, 筋拮抗比を主成分分析(Principal Component Analysis:以下PCA) することにより歩行運動を司る主要8筋の活動を3つの筋シナジーで表せることを示した. このようにして抽出された筋シナジー情報は運動機能評価に最適な情報と考えられるが,実際に筋シナジー情報を使用するにあたって, リアルタイムで筋シナジーを抽出し, 的確に観測者もしくは被験者に提示できることが好ましい．そこで本稿では運動機能評価を行うために，筋拮抗比に着目して筋シナジーをリアルタイムで可視化，取得できるソフトウェアを開発し，トレッドミル上での歩行運動計測実験を行った．以下, 実験環境, ソフトウェアの仕様, 歩行運動計測実験について詳細を述べる．