応答安定化制御回路を有する広帯域非線形振動発電デバイスのエネルギー収支

摘要

昨今の携帯電子機器の小型化や低消費電力化， Bluetooth low energy やANT といった無線規格の超低電力化が進み，それらがネットワークを構成することで，モノのインターネットすなわちIoT(Internet of Things)を基盤とする情報化社会の実現にますますの拍車をかけている．IoT とは，様々なモノやヒト，機械が各種センサを介してインターネットにつながることで，そこから得られた大量の情報，ビックデータからその場に適したサービスを提供することを目的とした技術(1)であり，新たなビジネス体系として注目されている．IoT 社会が浸透しつつある一方で，ネットワークを形成する無線や情報を取得するセンサの電源の確保，インフラの整備が問題となっている．バッテリーの小型化や長寿命化による解決法もあるが，広範囲に大量の電源が必要になるであろう IoT 社会において，バッテリーの交換やメンテナンスにかかるコスト，また廃棄物の処理など環境負荷の観点から見ても，その方法は必ずしも最適ではない．そこで提案されたのはエネルギーハーベスティング技術の一種である振動発電による電源の確保である．振動発電とは，環境中に存在する振動エネルギーを用いて発電を行う技術である．振動の力学的エネルギーをエネルギー源として発電を行う際，エネルギーの回収効率を上げるために，発電機構を内蔵した振動子を振動源に設置し，これを振動源に共振させる．しかし通常の線形振動子を用いる場合，発電効率を上げるために共振ピークを高く設計すると，共振帯域幅が減少し振動源の周波数変化により発電効率が著しく悪化するトレードオフが従来からの問題だった．