構造的類似度を指標とする画像の非線形縮小法

摘要

近年，スマートフォンやタブレットなどの多様な情報端末に対応するため，画像コンテンツをディズプレイサイズに合わせて非線形に縮小する技術が注目されている．その代表的な手法であるSeam Carving (SC) は，画像中の重要なオブジェクトを避けるように画面内を通過する画素列（シーム）を繰り返し削除することで，入力画像の構造を保持した縮小画像を生成している[1]．しかし，SC では過度な縮小率を設定したり，背景のテクスチャが複雑であったりした場合に，シームがオブジェクト領域に侵入してしまい，不自然に歪んだ縮小画像が生成されるという問題がある．これに対し，筆者らは一定幅の帯状シームを，DCT を用いた線形なスケーリング処理によって縮小する手法を提案している[2]. これにより，オブジェクト内でも適度なスケーリングを施すことが可能となるが，帯状シームの経路（パス）の選択基準に課題を残していた．本稿では，画像の構造的類似度に着目した客観的評価手法であるStructural SIMilarity(SSIM)[3] の概念を導入し，主観的により自然な縮小画像を生成する手法について検討する．