シーンのカテゴリ識別における中心視と周辺視の機能差に関する一検討

摘要

人はシーンを一瞥するだけで，それが属するカテゴリ名を瞬時に答えることができる．このような高速なカテゴリ識別能力について，視野依存性の観点から研究した事例は少ない．Larson 等は，中心視野に円形に切り取られたシーンを，周辺視野には半径の異なる2 つの同心円で囲まれたドーナツ状のシーンを，それぞれ単独に提示する手法を用いて，周辺視の優位性を示した[1]．また，彼等はシーンの提示後100ms 以内は注意が中心視野に向けられ，その後，周辺視野に広がることを報告している[2]．筆者は，Larson 等とは異なり，両視野にシーンを同時に提示する手法を用いて，中心・周辺視の時間特性について検討している[3]．課題は自然・人工カテゴリの識別である．50ms の短い提示時間では，中心視野に提示された人工シーンを自然シーンと誤答する割合が多かった．一方，周辺視野に対しては両カテゴリ共に高い正答率が維持された．この結果は周辺視の優位性を示唆する．周辺視は低空間周波数成分を高速に処理することが示唆されている[4]．本稿では，微分画像を提示することにより，低空間周波数成分が低減された画像に対しても周辺視の優位性が認められるのかどうかについて検討する．