持続的な繰り返しストレッチ刺激に対する線維芽細胞のCa2+シグナル応答

摘要

ヒトの皮膚組織の構造は，体表から表皮，真皮，皮下組織の三層である．真皮には主に線維芽細胞が存在し，外傷などで皮膚が破綻した際にコラーゲンを産生して傷の修復を行う．通常は傷の治癒とともにコラーゲン産生も収まるが，ケロイド・肥厚性瘢痕と呼ばれる線維増殖性疾患が存在し線維芽細胞によるコラーゲンの異常産生の結果，皮膚の傷が赤く盛り上がり痛みや痒みを伴う．ケロイド・肥厚性瘢痕は，前胸部や腹部に好発し，成因の一つとして皮膚への繰り返しストレッチ刺激の関与が指摘されている．このメカニカルストレスが線維芽細胞のコラーゲンの異常産生や血管新生を促進しているのではないかと言われているが，その詳細なメカニズムについては不明な点が多い．