米国ハリケーンカトリーナ災害の被災市街地における不動産の移管を伴う非営利組織による住宅復興

摘要

米国ハリケーンカトリーナ災害の被災地ニューオリンズ市では、地方自治体と非営利組織が連携して住宅復興に取り組んでいる。同災害でニューオリンズ市では市内の約4 分の3 の住宅ストックが何らかの被害を受けるという壊滅的な被害となった。このような被害に対してルイジアナ州政府が所管する住宅再建支援ロードホームプログラムが開始されたが、これは住宅所有者を対象としていること、個人を対象にしているため地域復興には直結しないこと、住宅補償という性格により住宅被害に加えて災害前の不動産価格が補償額の算定基準となることから低所得者に不利な制度となる、などの問題を抱えている。特に賃貸住宅オーナーに対する支援は手薄で、災害で多くの賃貸住宅が被害を受け、新規の供給量も限定的であるためアフォーダブルな賃貸住宅は極めて少なく、このことが借家人を被災地に戻れなくしている。被災地で復興における大きな障壁となっているのが、被害を受けて住宅再建を断念した住宅がそのままの形で放置されている放棄住宅である。放棄住宅とは建築的な面から居住不可能な住宅で、かつ居住者不在のものを指す（写真1）。このような不動産の存在は地域の住環境や治安の悪化を招き、これが地域住民の帰還や新たな住民の転入を阻害している。