生命体を題材とした設計論にみる参照の内容建築家の設計論における類推的思考に関する研究（1)

摘要

1960年代において、川添登を思想的根幹に据え都市や建築の新陳代謝を主張したメタボリズムは、生命体独自の特徴に着目した建築的概念を提示し、建築的思想に多大な影響を及ぼした。さらに、生物学研究の進歩や分野の細分化がみられる近年においては、生命体を様々な視点から参照することで新たな設計論が思索•展開されているといえる。このように建築設計において他分野の事柄を参照するという類推的思考は、抽象的な空間イメージに秩序や具体性を与えるもののひとつである。そこで本研究では、現代日本の建築家の生命体を題材とした設計論を資料対象として、その内容を検討することで建築家の類推的思考による設計論のひろがりのー端を明らかにすることを目的とする。まず本編では資料となる論説から、生命体のどのような側面を参照したかという『参照の内容』を検討する。次編では、どのような建築的操作に展開したかを『建築的操作の形式』として検討し、両者の関係を考察する。