建築写真誌のエディトリアルからみた空間表現桂離宮を題材とした写真集７件を対象に（１）

摘要

建築空間は作品集や雑誌等のメディアに写真や図版等の２次元情報として掲載されることにより私たちに広く認識されている。その際、現実の空間に最も近い写真が重要な役割を果たしていることは予想に難くない。富永が述べているように注１）、建築空間の本質が、視点の移動を伴う継起的な体験にあるとすると、単体の写真はその建築空間の断片を表しているに過ぎず、複数の写真を組み合わせなければ継起的な体験空間を表現することはできないと考えられる。その好例として桂離宮が挙げられる。桂離宮の写真集複数誌を概観すると、写真家や編集者、撮影年代などの諸条件が異なるにもかかわらず、酷似した写真の配列が多数確認さる。これは、建築空間を写真によって表現する際に欠かすことのできない節目となる写真や配列が存在することを意味する。つまり、この節目となる写真配列が写真集複数誌において通底する空間表現方法であると考えられる。