建物の微気象設計のための屋内外の放射エクセルギー分布に関する研究:夏季における樹木群の冷却効果の評価

摘要

本論文は、エクセルギー概念を手掛かりとして、屋外・屋内の放射環境を「見える化」できる評価の指標を見出すとともに、夏の放射熱による暑さの緩和対策における特に緑（樹木）の影響・効果について、これまでの知見をさらに補完する新たな知見を得ることを目的としている。この「見える化」できる評価指標は、これまでのMRT やSET*、WBGT 1)と異なり、対向建物壁の壁や屋上、広場・歩道床、空など、表面温度の異なる物体から、検討の対象とする建物ファサードや人へと入射する放射エクセルギーの大小を評価でき、屋外・屋内の放射環境を改善するための建築物や周囲のオープンスペースの樹木の計画・設計へと適用できると考えられる。本報では、建物周囲の植栽の樹木群により特に影響される屋内外環境の温湿度・風速・グローブ温度を連続測定する一方、ある時刻ごとに熱画像により樹木、構造物、屋外地表面あるいは室内の窓面を含めた各面の表面温度を測定し、MRT とともに放射エクセルギーの値を求めた。屋外環境の屋外広場と樹林、そして6F 北室・南室の室内側窓面について、主に緑（樹木）が多いが少ないかで放射エクセルギーとMRT がどの程度異なるかを比較した。