人口減少下の地方都市郊外部における近年の世帯入居分布の変容とその背景にある住民意向の研究

摘要

宅地開発が行われていても、宅地への世帯流入は宅地開発地だけでなく、既存市街地へも一定数の流入があったが、近年その数が減少し、宅地への世帯流入の大部分が宅地開発地一辺倒になっている現状が明らかとなった。また、その傾向が、宅地開発によって新興住宅地という新たな選択肢を提示することや、まとまった供給が行えるが故の目の留まりやすさに起因している可能性があり、宅地開発行為は宅地ストックがうまく循環することを阻害している恐れがある。ただ、新興住宅地の周辺環境は既存市街地の周辺環境よりも評価されていることは事実であるので、既存市街地においては環境整備により積極的に取り組まなければならないことも事実である。したがって、「コンパクトシティ」実現に向けては、まず土台作りとして、今以上の市街地拡大を防ぐために宅地造成のための開発行為を徹底的に封じ込める必要性がある。その上で既存市街地の選択的な整備、設備更新などを行う必要があると考える。宅地の需要は先細りはするものの住民がいる限りは存在するので、その需要が向く先をコントロールすることによって既存市街地の宅地ストックの循環を促進し、一定の密度を保った市街地形成が達成できるのではないかと考える。