美術館の展示室における光環境に関する研究: コンピュータシミュレーションによる採光手法の考察

摘要

1929 年にニューヨーク近代美術館が開館し，ホワイトキューブと呼ばれる均質な展示空間が開発され，美術館展示室の一般的な形式として定着した。また，均質な光環境が必要であることから，人工光のみによる照明が最適であるという論が定着していく。しかし，60 年代に入ると，美術作品固有のコンテクストを取り戻そうとする「サイトスペシフィック」という概念が生まれたため，建築方面からは均質な展示空間を脱却する試みが生まれる。例えば，建築家の磯崎新やレンゾ・ピアノは自然光の積極的な導入によって，展示室に「場」の固有性の創出を試みている。