動吸振器によるインバータモータの制振

摘要

電動機では，固定子と回転子間に作用している電磁力により固定子が振動し，電磁騒音が発生することがある．また，インバータ制御された電動機では駆動回転数が広範囲で変わるため防振が難しくなっている．電動機の制振のために動吸振器などの制振装置を使うことも考えられるが，電動機では空間に分布した電磁力が回転することにより固定子鉄心の振動モードも回転し，振動モードが空間に固定されないため，制振が困難となる．このような状況の中，著者らは振動モードが回転する固定子の電磁振動の制振のためには一個の動吸振器では制振ができないことを示すとともに，一対や複数対の動吸振器を用いる方法を提案し，理論解析からその有効性を示した．しかしながら，実際の電動機固定子ではその外周に放熱用のフィンや端子箱などがあり，動吸振器の設置スペースや設置位置に制約がある．よって，最適な位置に最適な一対の動吸振器を設置することが難しい場合も考えられる．また，動吸振器の固有振動数を最適な値に調整できたとしても，最適な減衰の値が大きい値となる場合には，減衰材料の性能に応じて必要とされるスペースの関係から最適な値を実現できない可能性もあると思われる．さらに，固定子の制振には一対以上の動吸振器が必要であるが，それらの質量を異なる値とした研究は見当たらない．