アジアにおけるSBASの現状

摘要

GPSを航空機の航法に利用する際には，GPSのみでは所要の完全性及び測位精度を確保できないことから，国際民間航空機関（ICAO：International Civil Aviation Organization）では，GPSあるいはGLONASSに適切な補強を施して使用することとしており， SARPS（International Standards and Recommended Practices：標準及び勧告方式）に補強システムが定められている[1]．補強システムのうち，補強情報を静止衛星から放送する方式が SBAS （ Satellite-Based Augmentation System：静止衛星型衛星航法補強システム）である．SBASは，我が国のMSAS（MTSAT Satellite-based Augmentation System:運輸多目的衛星用航法補強システム），米国のWAAS（Wide Area Augmentation System），欧州のEGNOS（European Geostationary Navigation Overlay Service）がサービスを提供してきた[2-8]．現在インドの GAGAN（GPS Aided Geo Augmented Navigation）が2014年から供用され[9,10]，ロシアのSDCM（The System for Differential Corrections and Monitoring）も試験放送を開始している[11]．このように，特にアジアにおいては複数の SBASを受信できる環境が構築されつつあり，これら SBASを活用できれば，アジア全土において完全性及び測位精度を満足する衛星航法が可能となる．これは，従来地上インフラの整備が遅れているアジアの国や地域であっても，SBAS を使用することで従来達成できなかった航行が見込めることを示唆している．