農薬の規制評価における生物濃縮性試験代替法

摘要

生物濃縮性を有する化学物質は食物連鎖を介して生体内に 蓄積し，最終的に高次の動物ゃヒトへの影響が懸念される. そのため，POPs条約15 （ストツクホルム条約）やPBT/vPvB （Persistent, Bioaccumulative and Toxic/very Persistent and very Bioaccumulative）規制2>等によって該当する化学物質 （農薬含む）の登録.使用が世界中で厳しく取り締まられて おり，濃縮性は安全性評価の重要項目の1つとなっている. 生物濃縮性の指標として一般的に用いられる生物濃縮係数 （BCF: Bioconcentration Factor）は，主として魚類を用いた 暴露試験から算出され，「［水生生物中の化合物濃度（C_f）］/ ［水中の化合物濃度（C_w）］」（BCFss）もしくは「［水生生物 による化合物の取込速度(K_u)］/ ［排泄速度(K_d)］」（BCF_k） で表される（図1）.例えば，POPs条約では得られたBCFが >5000で蓄積性あり，PBT/vPvB規制では>2000で蓄積性， >5000で高蓄積性ありと評価される.一般的な有機化合物 の場合，BCFはオクタノール/水分配係数（log P）と正の 相関を示すことから生物濃縮は化合物の脂肪組織への分配と みなされる.従い，各国.地域により閾値に違いはあるも のの，log Pが3.0-4.5以上の脂溶性化合物については生物濃 縮性試験の実施が要求される.標準的な魚類での濃縮性試 験方法は OECD （Organisation for Economic Co-operation and Development） Test Guideline 305により規定されてい るが，試験実施には多大な費用および労力を要するのみなら ず，脊椎動物である魚を数百匹単位で使用するため，近年では動物実験削減の観点から代替法への関心が高まっている. 本ショートレビューでは，これら代替法に関する最新動向を 紹介する.