副腎偶発腫瘍

摘要

副腎偶発腫瘍は悪性の可能性ホルモン過剰産生性の有無で手術の適応を決定する.副腎癌は生検でも術前診断が困難であり，疑った場合は積極的に外科的治療を検討する.最も頻度が高いのはホルモン非産生腺腫で，副腎偶発腫瘍全体の過半数を占める.内分泌学的スクリーニング検査としては，血清?尿中Kとともに，ACTH，コルチゾール，PRA,アルドステロン，蓄尿中メタネフリン2分画，血清DHEA-Sを測定する.いったんホルモン非産生腺腫と診断しても，その後ホルモン産生性が顕在化したり，副腎癌で腫瘍の急速な増大をきたすことがあるため，一定の経過観察が必要である.予期せず偶然に発見された副腎の腫瘤性病変を，副腎偶発腫瘍(adrenal incidentaloma)という.近年，腹部CT，超音波，MRI, PETなどの画像診断の発達と人間ドックなどの健康診断の普及に伴い，その発見頻度が著増している.過半数の副腎偶発腫瘍は経過観察でよいが，ホルモン過剰産生を示すものや悪性腫瘍など，治療適応となるものが含まれている.これらは高血圧症や糖尿病といった生活習慣病患者への合併がしばしば認められ，生活習慣病の原因となつていることもある.よって，的確な早期診断と治療が求められ，平成11年度より5年間にわたり，厚生労働省科学研究補助金特定疾患対策研究事業として疫学調査が施行された.3,678例の報告があり，平成16年度研究報告書に本邦における現状を報告した本稿ではそのデータをもとに副腎偶発腫瘍について概説する.