アレルギー炎症の新しい考え方；炎症のコンダクターとしてのマスト細胞

摘要

マスト細胞は，従来アレルギー反応のエフェクター細胞の面のみが強調されて来たが，近年その多彩な働きに注目が集まっている。 自然免疫における細菌，寄生虫の排除や，T細胞B細胞や樹状細胞との相互作用を介して免疫系に関与するとともに，炎症のコンダクターとして重要な役割を演じていることが明らかになって来た（図）。 ˉ蕙攻燃毎希求lの多能性血液幹細胞の子孫であり，皮膚や粘膜などの末梢組織に運ばれた後に分化，成熟することが知られている。 これらの主として外界に直接する臓器に定着している細胞で，刺激により脱顆粒と細胞分裂を繰り返し，およそ100日位の寿命があると言われている。 好酸球，好塩基球，好中球などの顆粒球やリンパ球は，活性化されるとアポトーシスに陥って細胞死を来すが，マスト細胞はアポトーシスにはならずにさらに分裂，増殖し，局所で炎症のコンダクターとして働く。 本稿では先ずアレルギー炎症のコンダクターとしてのマスト細胞の役割を概説し，炎症の現場におけるその活性化の微妙な制御，調節機構について，我々の研究を中心に紹介する。