分泌タンパク質の高効率インビボ機能解析システム（EXPOCシステム）により同定された腸管上皮成長因子，R－spondin1

摘要

分泌タンパク質の生理活性を効率的に評価するための生体内スクリーニング系を用いて，腸管上皮陰鳶細胞の増殖を強力かつ特異的に促進するR－spondin1を同定した、R－spondin1タンパク質のマウスへの投与はβカテニンの安定化を伴う除鳶細胞の急激な増殖を惹起し，さらにがん化学療法による膿粘膜炎の修復に効果があったことから，消化管傷害を伴う疾患の治療に利用できると考えられる。　ヒトゲノム仝塩基配列決定以降のゲノム関連情報の爆発的な増加と比較して，個々の遺伝子／タンパク質の機能を特定し，生命現象や疾患との関連を明らかにする研究の進展度合いは必ずしも十分でなく，創薬に携わる研究者の多くが，いわゆる「Target rich，but knowledge poor」という状況のもと，ハイリスクなターゲットを扱わざるを得ないという困難に直面している。アミノ酸配列からの構造予測や発現部位情報などをもとに選択された多数の遺伝子／タンパク質について，例えば細胞ベースのスクリーニング系により有用分子を検索するといった一般的なアプローチから得られる知見と，それら分子が実際に生体内で担う役割，生理活性，疾患との関連等（＝創薬ターゲットとしての有用性）の間にしばしば存在する大きなギヤツプがこの一因といえるだろう。