リンパ腫(低悪性度消化器型)

摘要

猫の低悪性度消化器型リンパ腫(Low Gradeリンパ腫，小細胞性リンパ腫）は消化管における小型で比較的 成熟したリンパ球が腫瘍性に増殖する病型であり，猫でもっとも一般的な消化管腫瘍である1》。一般的な臨床 症状は慢性的な体重減少,嘔吐,下痢,食欲不振であるが,緩徐に進行する場合が多い。臨床症状や画像所見,病 理学的所見が慢性腸症/炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease : IBD)と類似することから両者の鑑別は 予後の視点から非常に重要である。したがって，腸絨毛/粘膜上皮を評価可能とする適切な病理検体の採取 (例：内視鏡生検の場合には濾紙を用いた検体処理）2)やリンパ球クローナリティ検査を合わせた診断が重要 となる。低悪性度消化器型リンパ腫はクロラムブシルとプレドニゾロンの併用により比較的長期間（2年以 上）の生存率が得られ，治療プロトコルにエビデンスペースの大幅なアップデートはない。本稿では従来の治 療プロトコルと，近年報告されたレスキュープロトコルを合わせて紹介する。