食中毒菌検出用キットの近況

摘要

消費者の食の安全、安心に対する関心、要求の 高まりから，食品会社は食の安全確保のための自 主衛生管理を一層強く求められるようになってき ている.数あるリスク因子の中でも微生物による 食中毒は，最悪の場合死者が出る事例もあるうえ に，近年は流通環境の整備等により広域に拡大し て大きな被害をもたらすことから，これまで以上 に重要なものとなってきている.2011年4月に富山，福井，神奈川の焼肉チエ一 ン 店で発生した腸管 出血性大腸菌 0111および 0157による集団食中毒では，180名以上の患者の うち34名が重症症状である溶血性尿毒症症候群 (HUS)を発症し，5名の方が命を落とす大きな 事故につながった.このような痛ましい事故を 再発させないためにも，食品関連業者は衛生管理 体制を整備するとともに，自主検査において異常 が見られた場合は改善していくことが望ましい.これまで，食品の微生物衛生管理は主に一般生 菌数,大腸菌群，大腸菌などの衛生指標菌の検査 を中心に行われてきている.衛生指標菌は検査対 象食品の汚染の度合いや保管、取扱いの良否，さ らには病原菌の有無の推測に利用されているが， これらの検査のみでは重大な食中毒菌を見逃して しまう恐れがある.