人はなぜヒューマンエラーをするのか：人間特性の理解と対策

摘要

本稿では、人間の認知·行動のメカニズムを元に、ヒューマンエラーに結びつく人間特性のうち、「見落とし·聞き逃し」、「錯覚と思い込み」、「判断の誤り」、「うっかり…」とその対策について述べてきた。 ここでひとつ注記したいことは、ヒューマンェラーは、事故「原因」ではなく、様々な要因が重なりあって、不幸にして起こってしまった「結果」であるということである。 ヒューマンエラーの絡hだ事故について、その経過を見ていると、周囲はとかく、そのエラーを誰がおかしたのかという犯人探しを始める傾向が強い。 例えば、バナナの皮で滑った人がいるとする。 滑った人の不注意が原因だといって、滑った人を罰したところで、滑る人がもういなくなるかといえば、そのようなことはありえない。 前述のとおり、人間の注意には限界があるからである。 床にバナナの皮を捨てた人、ゴミ箱の不設置、バナナの皮があることすらよく見えない暗い廊下、バナナの皮があっても誰も片そうとしない場の雰囲気等々、このようにひとつのヒューマンエラーの影には、多数の背後要因が重なり合っていることを忘れてはならない。 そして、ヒューマンエラー防止対策は、地道にこのような背後要因をつぶしていくことにあり、画期的な処方箋は残念ながら存在しない。 日頃から、客観的な目でエラーの起こりそうな作業や場所、そしてどういう時に自分（あるいは周囲）の判断が揺らぐか、注意が適切に向かなくなるかなどを、観察することが重要であろう。